#0039 平成20年度税制改正大綱~公益法人関連~
2008/03/14
先般、平成20年度税制改正の大綱が示されました。この大綱には公益法人に関する税制改正も盛り込まれております。今回は本改正における公益法人に関連する税制改正の一部について御説明したいと思います。なお、本改正法案は本コラム作成時点では成立しておりませんが、公益法人に係る部分については改正案どおりとなる見込みのようです。
内容
1 法人税について
2 登録免許税について
3 消費税について
*改正の適用は平成20年12月1日からとなります。
1 法人税について
今回の改正では、焦点だった一般社団法人・一般財団法人の取扱いが示されました。また、公益社団法人・公益財団法人では優遇措置が拡充されました。
改正の重点ポイント その1
一般社団法人・一般財団法人は、「収益事業のみ課税」か「民間企業並み課税」の2パターンに
今回の改正では、一般社団法人・一般財団法人についての法人税改正が焦点のひとつでした。
例外なく民間企業並みに課税されるのではという予想がありましたが、今改正では折衷案ともいえるものが示されました。
法人税法上、一般社団法人・一般財団法人は「収益事業のみ課税の法人」と「民間企業並み課税の法
人」の2つに分けられます。
「収益事業のみ課税の法人」(非営利一般法人)については、言葉どおり収益事業で生じた所得(利益)についてのみ課税されます。ほぼ従来どおりの取扱いですが、大きな変更点は税率とみなし寄附金についてです。
まず税率については、従来の22%から30%へアップしました。従来は所得金額の多少に関わらず税率は22%でした。今後は所得金額のうち800万円を越える部分については30%の税率(800万円以下の部分は軽減税率22%)が適用されることになり、民間企業と同様の扱いになります。
みなし寄附金については一切適用がなくなり、収益事業の所得金額の全額について課税されることとなります。また、公益目的事業(非収益事業)の費用は損金に算入することができません。
さらに、受取利子等の源泉所得税も課税されることになりました。
*非営利一般法人の要件として、剰余金の分配を行わないことや解散時の残余財産を国又は地方公共団体等に帰属させること、理事等による同族支配の制限、会員に対する共益活動が主たる目的であること等が求められます。
「民間企業並み課税の法人」については、こちらも言葉どおり民間企業と同じ扱いとなり、全ての事業で生じた所得に対して課税されます。公益目的事業も課税となります。税率については30%で所得金額800万円以下の部分については軽減税率22%が適用されます。
また、みなし寄附金の適用もありません。従って現在行われている収益事業と非収益事業の区分経理は必要なくなります。
さらに、受取利息等の源泉所得税も課税されることとなりました。
改正の重点ポイント その2
公益社団法人・公益財団法人は優遇措置の拡充
公益社団・財団法人については、ほぼ従来どおりの扱いとなりますが、収益事業の範囲から公益目的事業に該当するものが除外されたり、みなし寄附金の損金算入限度額が拡充されたり等の優遇措置が示されました。
一方で税率については30%となり、所得金額800万円以下の部分については軽減税率22%が適用されます。
みなし寄附金については、収益事業から自法人の公益目的事業のために支出した額は、その収益事業での寄附金とみなされます。
寄附金の損金算入限度額については、従来の20%から拡充されました。以下のいずれか多い金額が損金算入を認められます。
イ 所得金額の50%相当額
ロ みなし寄附金のうち、公益目的事業のために使用し、又は使用することが確実であると認められるもの
なお、特例民法法人(移行期間中の特例社団法人・特例財団法人)の法人税取扱は従来と変わりはなく、収益事業にのみ課税され税率も22%が適用されます。みなし寄附金についても支出額のうち収益事業所得の20%が損金算入限度額となります。
改正の重点ポイント その3
・収益事業の範囲に労働派遣業が追加されました。
・寄附税制についても改正が行われました。
特定公益増進法人の範囲に、公益社団法人・公益財団法人が追加されました。
また、特例民法法人については引き続き特定公益増進法人として扱われます。
2 登録免許税について
制度改正を踏まえたうえで、登録免許税についても改正案が示されました。
①一般社団法人・一般財団法人の設立登記等
一件につき6万円等の登録免許税が課税されることとなります。
②公益社団法人・公益財団法人に係る各変更登記
役員の変更登記等又は公益認定の際の変更登記については、非課税となります。
③特例民法法人等からの移行に係る登記
特例民法法人等から一般社団法人・一般財団法人又は公益社団法人・公益財団法人への移行に係
る登記等については、非課税となります。
3 消費税について
一般社団法人及び一般財団法人が消費税法別表第三に加えられます。つまり、一般社団法人及び一般財団法人についても、資産の譲渡等の時期の特例(税務署長の承認を受けた場合)や仕入税額控除の特例、申告・納付期限の特例(税務署長の承認を受けた場合)が適用されることとなります。
上記以外の事項についても改正案が示されておりますが、別の機会に改めて御説明できればと存じます。御不明な点等ありましたら、当事務所の公益・社会福祉法人部にお問い合わせください。
税理士法人 道央会計事務所 社会福祉法人部