#0154 社会福祉法の改正と今後の評議員の法律上の義務や責任
2016/01/29
「社会福祉法等の一部を改正する法律案」が平成27年7月31日に衆議院本会議で可決され、平成28年1月現在参議院にて審議されています。今回は「社会福祉法人制度の改革」の重要項目であるガバナンス(直訳すると“統治”ですが、このコラムでは法人の意思決定や合意のためのシステムと捉えて説明します)の強化について焦点を当てます。
法改正後は社会福祉法人にも、公益財団法人と同等以上の公益性の確保が求められます。具体例の一つとしては、議決機関としての「評議員会」の設置が義務付けられ、定款の変更や役員の選任・解任に加え、役員報酬の決定も、評議員会の決議で行われます。 法人の意思決定について重要な役割を担うこととなる評議員と社会福祉法人との関係について、これまでの定款準則によれば、「第〇条 評議員は、社会福祉事業に関心を持ち、又は学識経験ある者で、この法人の趣旨に賛成して協力する者の中から理事会の同意を経て、理事長がこれを委嘱する。」とされていたのに対し、改正法第38条(社会福祉法人と評議員との関係)においては、「社会福祉法人と評議員、役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。」とされ、評議員についても役員(理事・監事)、会計監査人(以下「役員等」)と同様に、より明確に法律上の義務や責任が求められることとなりました。
民法の委任の規定に従うことにより、例えば『善管注意義務』(その職務や地位に値するだけの高度な注意力が要求されます)や、『報告義務』(経過や顛末の報告義務)等の法人の運営に関する職務上の義務に加え、役員等と連帯して社会福祉法人や第三者に対する損害賠償責任をも負うこととなります。(改正法第45条の二十、二十一、二十二)
衆議院の附帯決議10項目のなかに、「社会福祉法人の経営組織のガバナンスを強化するには、評議員、理事等の人材の確保や会計監査人の導入等、新たな負担も懸念される。このため、特に小規模の法人については、今後も安定した活動ができるよう、必要な支援に遺憾なきを期すこと」とありますが、これまで以上に制限、責任がともに厳しくなる中、役職員との兼務禁止や法人の適正な運営に必要な識見を有するなどの条件を満たした評議員を必要定数確保できるかどうかは、法人の規模を問わず今後の大きな課題であるといえます。
税理士法人 さくら総合会計 公益・社会福祉法人部 岡田 光次郎