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コラムレター

#0116 「つなぎ法案」成立
2011/04/11
 この度、東日本太平洋沖地震の災害により被害にあわれた方、ならびにそのご家族の方々に対し、お見舞い申し上げます。
 復興財源をめぐり様々な議論がされる中、平成23年3月31日に適用期限が到来する租税特別措置について、「国民生活等の混乱を回避するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案」等、いわゆる「つなぎ法案」が参院本会議で可決され、成立致しました。これにより、その適用期限が平成23年6月30日まで延期されることになりました。

【租税特別措置法とは何か】 租税特別措置法とは主として当面の産業政策的要請から、期間を限定して、国税(法人税、所得税、相続税法・・・)に定める内容を暫定的に修正する特例を定めた法律を言います。
 一般的には税率の低減などの減税措置が主ですが、増税措置も取られる場合があり、記憶に新しいところでは、租税特別措置法によるガソリン1ℓあたり53.8円だった揮発油税が、平成20年3月31日で措置法の期限が切れ、同年4月1日から本来の税率1ℓあたり28.7円に引下げられ、暫定税率が再可決した4月30日までガソリンの値段が安くなった事がありました。

【今回、適用期限が延長される代表的な租税特別措置】
1.法人税関係 
 中小事業者等の法人税率の特例
(平成21年度の税制改正により中小企業者等の法人税率の特例として創設)
 →中小企業に対する年800万円以下の所得金額部分の税率を法人税法本則22%から租税特別措置法により18%とする特例

 平成23年度の税制改正法案では中小企業に対する税率を平成23年4月1日開始事から平成26年3月31日開始事業年度について、現行の18%から更に15%へと引下る内容となっておりましたが、年度内に成立はせず、当面3カ月間の延長となりました。

2.登録免許税関係
 住宅用家屋の所有権の保存登記の税率の軽減
(昭和59年税制改正により創設)
 →①適用要件
   ・自己居住用の住宅
   ・新築又は取得後1年以内に登記されたもの
   ・床面積(登記簿面積)50㎡以上
  ②軽減税率
    4/1,000  →  1.5/1,000



 住宅用家屋の所有権の移転登記の税率の軽減
(昭和59年税制改正により創設)
 →①適用要件
   ・自己居住用の住宅
   ・取得後1年以内に登記されたもの
   ・築後20年以内(耐火建築物については25年以内)。この年数を超える場合にはその住宅が新耐震基準に適合していることについて証明されたものである事。
   ・床面積(登記簿面積)50㎡以上
  ②軽減税率
    20/1,000  →  3/1,000
 
 住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記の税率の軽減
(昭和59年税制改正により創設)
 →①適用要件
    上記の条件を満たす住宅への抵当権設定
  ②軽減税率
    4/1,000  →  1/1,000

3.印紙税関係  
 不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の軽減
(平成9年度の税制改正により創設され、その後2年毎に延長されました)
 →「不動産売買契約書」及び「建設工事請負契約書」に係る印紙税の特例

  契約金額                  本則税率    軽減後税率
   1千万円を超え5千万円以下のもの    2万円     1万5千円
   5千万円を超え1億円以下のもの       6万円     4万5千円
   1億円を超え5億円以下のもの       10万円     8万円
   5億円を超え10億円以下のもの        20万円    18万円
   10億円を超え50億円以下のもの      40万円     36万円
   50億円を超えるもの              60万円    54万円
これらの税率・税額の軽減は平成23年3月31日までの時限的措置であり、平成23年度税制改正として、同措置を平成25年3月31日まで延長する改正案が国会に提出されておりましたが、年度内に成立はせず当面3か月間の延長となりました。

【今後の展望】 法人実効税率の引下げなどを盛り込んだ平成23年度税制改正法案は、今回の東北大震災の影響もあり棚上げ状態となっております。震災復興の税収を確保するため、一部の減税措置が見送られる可能性もありますし、税制改正法案がこのまま成立せず、6月を迎えれば増税となる可能性も拭えません。


税理士法人 さくら総合会計 (監査部) 澤田